【暇つぶし】ネットユーザーが語る奇妙な出来事
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名無しの面白ニュースマニアさん
^11/02/18 14:07
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・・・夜汽車が走る
何処かへと向かう夜汽車・・・
とある駅で一人の男が乗り込んできた(大杉漣)
手には鞄とビニール袋。
車内を見渡す。
車内には会社帰りの酔っ払ったサラリーマン、子供2人を連れたおばさん、今どき風のイチャつくカップルが乗っている・・・なんとなく居心地の悪い空気だ。
出来るだけ彼等から距離をとりたいと席を探す、
「ドン!」
背中に衝撃が走り手に持っていたビニール袋を落としてしまう。
振り返ると先程の子供、その子供と一瞬目が合う。
車内を走り回っているのに注意もしない親、(なんてことだ!)心の中で呟く。
手頃な席を見つけ腰を下ろす。
ビニール袋から箱を取り出した、駅弁である。
丁寧に包み紙を剥がし蓋を開けると、思わず顔がにやける。
駅弁の中身は、一口大の厚焼き卵、カマボコ一切れ、煮物の椎茸に人参・カボチャ、きんぴらゴボウ、ブロッコリーの天ぷら、しば漬け、そして嬉しいのは緑色に輝くウグイス豆の存在である。俵型に分けたご飯にはゴマと梅干しが乗っている。
(しかしこれらはメインのおかずの引き立て役にすぎない)
そのメインとは、レモンと千切りキャベツに添えられた2個のフライ。大きい方のフライは間違いなくカツに違いないと確信している!なぜならもしこれが白身魚のフライならタルタルソースが付いてくるはずである、それが無いと言うことはカツに間違いない。そしてもう一つのフライはイカのリング揚げ、こちらはもう一目瞭然である。
駅弁の中身は確認した、次はおかずの攻め方である。
まずは様子見に厚焼き卵を一口、しば漬けを一口、カマボコを一口、と回りから攻めていき、後半はメインのフライをじっくりと味わう。カツを食べ、ラストの締めくくりはイカのリング揚げで締める。そう最後のお楽しみはイカのリング揚げである。
おかずの攻め方は決まった、次はご飯の攻め方だ。
ポイントはおかずの塩分量と脂肪分である。
塩分や脂肪分の多いおかずほどご飯を多く必要とする。
それを計算しながらご飯を食べていけば後半ご飯だけあまったり、ご飯が足りなくなったりすることはない。
『いただきます』
・・・しまった!ついいつもの癖で口に出してしまった!。周りに聞こえてはいないだろうか?しかしご飯を食べる前はいただきますだろ!私はなにも間違ってはいない。
プラン通りに駅弁を食べ始める。卵焼きを一口、うむ予想通り無難な味だ。ご飯は少なめに一口。続いてしば漬け。これもまた無難。最初は無難に攻めるに限る。ご飯も柔らかくゴマの量もちょうど良い。カマボコを一口。うん、歯ごたえがあってなかなかよろしい。次に煮物に手を出そうとしたが・・・
(少し冒険してみるか)
煮物をやめ、ブロッコリーの天ぷらを口に運ぶ。・・・う〜ん、多少塩が効いてはいるが、個人的にはもう少ししょっぱくてもいいところだ・・・
続いてきんぴらゴボウ、・・・んっ!しょっぱい!これはしょっぱすぎる!ここはご飯一口の予定だったがもう一口食べたい。しかしこれ以上ご飯を食べてしまうと後半のご飯のバランスが崩れてしまう。なにかないか?そうだウグイス豆だ!このウグイス豆の甘さがしょっぱさを消してくれるだろう。
その後苦手の煮物をクリアしお茶を一口飲んで落ち着く。
(いよいよメインおかずを攻める時がやってきた)
キャベツの千切りの横にはマヨネーズとソースの小袋が置いてある、それらを手に取りまずカツにソースをかける・・・・・・ん?これは・・・ソースじゃない!醤油じゃないか!何故ソースではなく醤油なんだ!
ソースは入ってないのか?恐る恐るキャベツをどかしてみるとキャベツの下からソースの袋が出てきた、何故こんな所に?・・・それじゃあこの既にかけてしまった醤油はなんに使うはずだったんだ?(・・・ブロッコリー・・・・うん、多少の塩が効いてはいるが、個人的にはもう少ししょっぱくてもいいところだ・・・・)そうか!どうりであのブロッコリーの天ぷら、味が薄かったわけだ。醤油は天ぷら用だったのか!しかし何故こんな紛らわしい場所に?アッ!さっき車内を走り回っていた子供とぶつかり駅弁を落とした時に移動してしまったのか。思わぬ誤算だ。誤算・・・?・・・まさかこのキャベツ用にと思われていたマヨネーズがタルタルソースの代用品なんてことは?確かにキャベツの量から計算するとマヨネーズの袋がデカすぎる気もする。つまりマヨネーズは白身魚フライ用でこっちのソースがキャベツ用と言うパターンも考えられるわけだ。フライの正体がカツなら最初の予定通りソースをかければ良いわけだが・・・・
カツなのか?白身フライなのか?
右手にマヨネーズ、左手にはソースを持ち目を閉じたまま固まる。
・・・(よし!)
決心をきめ一気にフライにはソース、キャベツにマヨネーズをかけた。
フライを口に運ぶ、そして一口・・・・・・
『サクッ』
(・・・勝った!私は勝ったんだ! 美味いじゃないか!最高のカツだ!まさしく勝利の味だ!)
最後はイカのリング揚げだ。
イカのリング揚げには小さな頃から思い入れがある・・・幼かった日々・・・うちは貧乏で遠足の弁当ですらおにぎりしか持たせて貰えなかった、クラスメイトから離れた所でこっそり食べようとしていたら密かに好きだった幼なじみの少女がイカのリング揚げを恵んでくれたっけ・・・昔の事を思い出し思わず涙ぐむ。
軽く目をこすり、イカのリング揚げを箸で掴み、かじりつく。
『シャリッ』
『・・・・・・・・・・・・・・』
思わずフライを弁当箱に落としてしまう。
半分かじったリング状のフライの端から覗いていたのは・・・・・・
・・・・タマネギであった。
夜汽車は走り続ける。
----評 価----
★★★★★(+5)
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