先月、米ミシガン州プリマスで開かれた自動車ショーでは、流線型のポルシェ911やたくましいフォードGTもとまっていたが、多くのカーマニアはショーの本当の主役、ポンティアックのクロスオーバーワゴン「アズテック」の周りに集まった。
かつて史上最も醜い車と呼ばれていた車だ。
この2004年式アズテックについて、所有者のライアン・ウォルチさんは「今までに持った中で最高の車だ」と述べた。ショーで最高の賞とされる「最悪車賞」を持ち帰ったのは彼だった。「これが大好きなんだ」とウォルチさんは話した。
これは「コンクール・ドゥレモン(Concours d'LeMons)」という自動車ショー。
「自動車界で一風変わった車、平凡な車、最悪な車」が集結するとうたわれている。
この名称は欠陥車を意味する「レモン(lemon)」を掛けたものであり、これと平行して全米各地で開催されるイベント「コンクール・デレガンス」のパロディー版だ。
コンクール・デレガンスのほうは高級クラシックカーのショーで、デューセンバーグ、ポルシェやジャガーなどが並ぶ。
コンクール・デレガンスでは、出場者たちが最高賞をめぐって競い合い、
「戦前の英国製スポーツカー」
「フェラーリ・コンテスト」
といった部門にエントリーする。一部のモデルの評価額は数百万ドルに達する。
一方のコンクール・ドゥレモンは、最悪とされる車が最高だと考え、それを愛する人々のためのショーだ。
出場者は
「最も危険な車賞」
「落ちこぼれ賞」
といった賞を持ち帰る。
エントリーできる部門には、
「恐怖のフランス部隊」
「スウェーデン製ミートボール」
「無駄に複雑なイタリア製」
「魂が吸い取られるほどに日本製」
といったものがある。
コンクール・ドゥレモンの審査員に飲食物の賄賂(わいろ)を渡すことは、容認されているばかりでなく、期待もされている。
コンクール・ドゥレモンは、カリフォルニア州モントレー、ジョージア州アトランタ、ミシガン州南西部で開かれるコンクール・デレガンスと平行して開催される人気のショーとなっており、クラシックカー界に若干のユーモアの余地を生み出している。
プリマスで7月25日に開催されたコンクール・ドゥレモンでは、美しさに欠ける1970年代式のフォード・ピントやAMCペーサーなどとともに、ソ連時代の車「ラーダ」が1台並んでいた。貧弱なエンジンを積んだオレンジ色の箱型4ドア車だ。
さびに覆われた1958年式エドセル・コルセアには消火器が積まれていた。その理由は「何が起こるか見当がつかない(所有者のマーティン・ミントンさん)」からだ。
このショーは、自動車ショーと改造車の長年のファンであるアラン・ガルブレース氏が7年前に立ち上げた。狙いはシンプル。「自動車ショー界をぶちこわす」ことだ。
ガルブレース氏はこのイベントをパーティーの雰囲気を壊すものの最終形と位置づけている。
ヒントは、レモン24時間耐久レース(ル・マン24時間耐久レースのもじりで、車両価格が500ドル未満の車が出場するレース。毎年数百台がエントリーする)から得た。
ぽんこつ車やレモン、つまり欠陥車を賛美する余地がもっとあると考えたのだ。
同氏は「ここには悪い車の好例や、良い車の悪例が集まる。それで十分だ」と話した。
同氏はハガティ・クラシックカー保険や、スポーツ車専門誌「グラスルーツ・モータースポーツ」といったスポンサーを得ており、自らの時間の大半をイベントの計画に費やしている。
コンクール・ドゥレモンは、メーンイベントであるコンクール・デレガンスの一部として認知されるようになっており、ファンたちはさまざまな理由で両方のイベントを行き来する。
ガルブレース氏によると、8月15日にモンテレーで開催されたコンクール・ドゥレモンには105台の車が集まり、2000~3000人のゲストが来場した。
ショーが終わると、エントリーした多くの人々は、車のエンジンをかけ、その場を離れることに苦戦していた。
すると、ガルブレース氏がこう警告した。
「車はちゃんと持ち帰ってください。ここに置き去りにしないでください。前にそういったことがありましたので」
[引用/参照:http://jp.wsj.com/articles/SB10327460236075474355904581193692149243026]