2000年に公開され話題になった『ペイ・フォワード』という映画をご存知だろうか? 「世界を変えたいと思ったら何をするか?」と教師に問いかけられた中学生の主人公は「ペイ・フォワード」という仕組みを思いつく。自分が受けた思いやりや善意を、その相手ではなくまた別の3人の相手に渡していくことで善意を広げていくというものだ。
超理想的な印象を受けるアイデアであるが、実際にこの仕組みが機能しているカフェがアメリカに存在する。そのカフェでは、他の客のコーヒー代を払い合うことが当然のように行われているのだ。それはある女性客の行為がきっかけだった。
アメリカのサウスカロライナ州にあるコーナーパークという名のカフェでその出来事が起きたのは2年前のこと。ある女性客が自分のコーヒー代を支払うのと同時に、余分に100ドル(約8800円)を店に渡したのだ。「これから来るお客さん達のコーヒー代に使って」と言って。
匿名を希望するこの女性客の要望を受け入れたお店側は、そのお金を他の客のコーヒー代に使っていった。その女性客はその後も、2、3カ月おきに同様の目的で高額のお金をお店に渡していったという。
当初、コーヒー代を支払われたお客は「どういうこと? うまく理解できないんだけど」と当惑していたそうだ。しかし、人口1万2000人のこの小さな町で女性客の行為が口コミで広がるにつれて、同じように他のお客のコーヒー代にとカフェにお金を置いていく客が増えていったという。まさに「ペイ・フォワード」のごとく、善意の輪が広がっていったのだ。今やコーヒーを注文せずに、お金だけを渡しにカフェに立ち寄るお客もいるのだそうだ。
このカフェではコーヒー一杯は1.95ドル(約180円)。決して大金ではない。しかし、経済的な困難を抱えているお客にとっては貴重なお金であるし、なによりも他人の寛大な優しさが込められたコーヒーは、どんなコーヒーよりも一日をスタートさせる元気を与えてくれるにちがいない。
[rocketnews24]