今年3月、南アフリカ共和国の外科医チームが、世界で初めてペニスの移植に成功したというニュースが報じられた。
この9時間にわたる手術が行われたのは、2014年12月のこと。移植は見事成功し、さらにその3ヵ月後、医師チームの予想よりも早く、排泄機能や生殖機能などあらゆる面で回復が見られた。
移植手術を受けたのは、3年前に成人の通過儀礼である”割礼”の失敗で、ペニスを失った21歳の男性だ。
南アフリカの一部の民族では、この性器の包皮を切り取る慣習が根強く残っている。しかし、施術用の器具が未消毒であるなど不衛生な環境で行われたり、技術が未熟だったりするため、割礼に失敗し、性器の切断や死に至るケースも少なくない。
移植手術の指揮を執ったステレンボッシュ大学医学部泌尿器科学主任教授のアンドレ・ファンデルメルベ医師は、ニューヨークマガジンのインタビューのなかで、患者について次のように明かした。
「移植前、患者は地獄のような日々を送っていました。この国では彼をはじめ多くの男性が、割礼の失敗によるペニスの壊疽や傷口の感染に苦しんでおり、腎不全を発症しています。これは想像を絶する経験です」
20歳前の男性にとって、このような理由によるペニスの切断は、精神的ダメージが大きく、過去には自殺した少年もいるという。
しかし、この患者はそうした試練を乗り越え、さらに「接合したペニスで性交渉ができるまで約2年かかる」という予想よりもはるかに早く、機能が回復した。
ファンデルメルベ医師は「術後5週目で縫合した部分が完全に癒合するかどうかわからなかったので、この時期の性交渉にはかなりの不安がありました。しかし、その心配は杞憂に過ぎなかったようです」と語った。
失敗に終わった中国でのペニス移植手術
実は2006年に中国でペニス移植手術が行われたことがある。患者は44歳の男性。事故により再建が不可能なほどひどい損傷を受け、排尿機能も生殖機能も失い、1cmほどの痕跡しか残っていなかった。
移植チームは、脳死の男性から提供された10cmのペニスを15時間かけて接合。
しかし、その2週間後、そのペニスをまたしても切り離さなくてはならなくなる。肉体的な拒否反応はなかったものの、患者とその妻の精神状態がかなり不安定になったことが理由だった。
幸いにも今回移植を受けた21歳の南アフリカの男性には副作用もなく、手術の成功を喜んでいるという。今後の課題は、死亡者がドナーになることを家族に同意してもらうこと、そして十分な資金の調達をすることだ。
またファンデルベルメ医師は、ペニス提供志願者が同意後に気が変わってしまうことも危惧している。
しかし、この成功によりがんでペニスを切除した男性に対する移植や、さらに重度のED(勃起不全)患者への適用も期待できるといわれている。
現在、同大学では9人の男性への移植手術が予定されており、今後の行方にも大きな注目が集まるだろう。
[引用/参照:http://healthpress.jp/2015/04/ed.html]