そのフライトは普段通りに始まり、コックピット内での会話もごく普通のもので、アンドレアス・ルビッツ(Andreas Lubitz)副操縦士が実行したとされる恐怖の行動の兆候は一切なかった。
仏検察当局と独大衆紙ビルト(Bild)によると、独格安航空会社ジャーマンウイングス(Germanwings)4U9525便の飛行はこのようにして始まった。
捜査当局は、同便がルビッツ副操縦士によって意図的に仏アルプス(Alps)の山腹に墜落させられたとみている。
検察の発表とビルト紙の報道はともに、墜落現場から回収された同便のボイスレコーダー(音声記録装置)の内容に基づいている。
同装置の解析を担当するブリス・ロバン(Brice Robin)検察官の26日の記者会見によると、同便はスペイン・バルセロナ(Barcelona)を現地時間の24日午前10時ごろ離陸。
操縦士らは「最初の20分間、操縦士らが通常するように、ごく普通に丁寧な口調で話していた」という。
ビルト紙の29日の報道によると、この会話の中で機長は、離陸前にトイレに行く時間がなかったと話し、ルビッツ副操縦士はいつでも操縦を引き継ぐと申し出た。
同紙によると、機体は10時27分に巡航高度の1万1600メートルに到達。機長はルビッツ副操縦士に対し、着陸準備を始めるよう指示した。ルビッツ副操縦士の応答は普通だったが、「極めて短く、対話とは言えないものだった」(ロバン検察官)という。
■操縦室に1人残された副操縦士
ビルト紙によると、副操縦士は、着陸に向けたチェックが終わると、もう行っても大丈夫、と機長に伝えた。その2分後、機長はルビッツ副操縦士に対し操縦の交代を頼んだ。
その後、椅子を後ろに引いてドアが閉まる音がした。ロバン検察官は、機長が「トイレに行ったのだと思われる」と説明している。
仏検察当局は、1人になった副操縦士が飛行監視システムのボタンを押し、機体の降下が始まったとみている。
「この動作は、故意でしかあり得ない」「もし意識を失って覆いかぶさったとしても、(ボタンは)4分の1押されるだけで作動はしない」(ロバン検察官)
機体は10時29分に降下を開始。ジャーマンウイングスによると、その後8分間にわたり急降下を続けた。
10時32分に航空管制官が同機との交信を試みたが、同機からは応答はなく、それとほぼ同時に自動警報システムが作動した。
機長はトイレから戻り、操縦室のドアを開けようとした。ドアはハイジャック防止のため強化されており、開けるには暗証コードが必要だ。
機長がコードを知らなかったことも考えられるが、ジャーマンウイングスの親会社ルフトハンザ航空(Lufthansa)のカールステン・シュポア(Carsten Spohr)最高経営責任者(CEO)は、その可能性は低いとしている。
当局は、ルビッツ副操縦士が故意にドアを内側から施錠し、誰も入れないようにした可能性の方が高いとみている。
■コックピット内は「完全な静寂」
その後、誰かが操縦室に戻るためにドアを開けようとしているような大きな音と、機長が「頼むからドアを開けてくれ」と叫ぶ声や、乗客の悲鳴が聞こえた。
ロバン検察官によると、機長が次第に必死さを増してドアを打ち破ろうと試みる一方で、ルビッツ副操縦士からは何の反応もなかった。
10時35分、操縦室のドアに対する「大きな金属の打撃音」が聞こえた。その約90秒後に、別の警報が作動。高度5000メートル付近で、機長は「ドアを開けろ」と叫んだ。
10時38分、ルビッツ副操縦士は無言のまま、呼吸音だけを発していた。ロバン検察官は「彼は一言も発しなかった。完全な静寂だ」と話している。
10時40分、機体は山腹に衝突し、乗客の叫び声が聞かれた。
ビルト紙は、これが録音されていた最後の音だったとしている。
ロバン検察官によると、同機は高度約1万~1万2000メートルから2000メートルまで徐々に降下したため、乗客は事態に気づいていなかったとみられる。
「犠牲者らは、最後の瞬間になって初めて気がついたと思う。悲鳴が聞こえたのは、衝突の直前だった」という。
[引用/参照:AFPBB News]
http://news.infoseek.co.jp/article/afpbb_3043743
生々しい状況にゾッとするよ