最近フルーツを売り歩く若者が増えている。というのもこれ、様々な地域で出没している謎のビジネスで、ネットでも目撃情報が頻出しているのだ。

フルーツを沢山入れたかごを抱えた若者が「売れ残ってしまったので1つ勝ってくれませんか？」「最近フルーツを食べていますか？」などと声をかけて売り歩いているのだ。

オフィスに飛び込み営業することもあるし、終電直前の駅で酔った人に売りつけるような手口もあるので、「マルチ商法ではないか？」「自己啓発系では？」といった声が上がっている。

【体験談】
平日の夜11時ころに仕事が終わって帰る途中で、駅前のコンビニに入ろうとしたら「すいませ～ん」「すいませ～ん」と女性が声を掛けてきた。

「市場で直接仕入れたフルーツを売っています。いかがですか？」というので、「興味がない」と言ったら「今日は長崎産のパッションフルーツが入っているんですよ。1個150円です」とセールスをしてきた。
だが、こちらにその気がないとわかると他の客に向かっていった。

だが、コンビニを出ると再び「すいませ～ん」「すいませ～ん」と声を掛けてきた。「さっき断ったでしょ」と言ったら「全部売れるまで帰れないんです」というので、話を聞くと、」ここぞとばかりに「デパートであれば、4000円するマスカットですが、今日は2000円です」とまたセールス。

「高いよ」と言ったら、今度はみかんを取り出して、「みかんは4個で1000円です」と言う。2000円のマスカットか1000円のみかんか、このどちらかを買ってくれというの。

「さっきの150円のパッションフルーツは？」と聞くと、「あっ、パッションフルーツもあります」とパッションフルーツを出してくる。相手の反応を見てセールスする商品を変えているらしい。

後日、この体験談を周囲に話すと、ある若者（以下、A子さん）が「私、そのアルバイトをやっていたことがあります。3日で辞めましたけど」というのだ。A子さんの話を詳しく聞いてみたら、相当悪質な商売ということが分かった。
　
A子さんは、アルバイト情報誌の「日給1万円」という広告を見て、このフルーツ売りの会社B社に応募したという。その内容は、だいたい以下のようなものだった。

・朝、B社に集合、全員揃うと朝礼が始まる。
・朝礼では全員で円陣を組み、笑顔でハイタッチ。「今日もがんばって売ろう」と大声を出す。
・業者から安く買い叩いた売れ残りのフルーツを箱から開け、腐ったものは捨て、売れそうなものだけカゴに入れる。客に売る価格は、その場で本社が決める。
・リーダーを中心にグループになって、それぞれのグループで当日、売りに行くエリアを決める。現地に着いたら、ひたすら売り続ける。

B社のシステムだと、グループのリーダーになるにはある程度の売り上げ成績を上げる必要がある。リーダーでもいくつかの段階があり、一番の上のステージになると自分でフルーツ売りの会社を持てるようになるという。

つまりは一国一城の主としていつかは独立することができる、という夢が用意されているわけだ。

A子さんは、1日目はフルーツを40個売った。するとリーダーから「今日はがんばったね』と4000円を手渡されたという。ボーナスかと思って喜んでいたら、それはその日の日当だった。

つまり日給1万円という広告はウソで、完全出来高払い。当日の売り上げ分に対して数千円が支払われるのみだったのだ。

「2日目、3日目と、なかなか売れませんでした。ただ、3日目終了後に『できたら、給料は当日払いにしてほしい』とお願いしたら、リーダーは『えっ、もう出来高の4000円は払ってますよ』と返答。

『それはおかしい。日給1万円と書いてあったから働いている』と日給の支払いを要求したら、リーダーは困り果てて『今、手元には2万円しかない。これで勘弁してほしい』と2万円を手渡された」（A子さん）

そのリーダーの対応にはさすがに頭にきて、それ以降行かなくなった。

しかしこのB社、明らかに若者の労働を搾取する“労働マルチ”であり、やりがい搾取の典型だと思われる。やりがい搾取とは、様々なな仕掛けでやりがいを錯覚させ、従業員を安く働かせて搾取するという業務形態。

代わりがいくらでもいる若手からは身体や精神が壊れるまで搾取する。その舞台装置が自己啓発的な笑顔の朝礼やいつかは独立できるという目標設定だ。

今後、街で「若者のフルーツ売り」を見たら、搾取されていることに同情してフルーツを購入するようなことはせず、やりがい搾取から目覚めるよう逆洗脳をすることが必要だろう。

[引用/参照：YahooNews]
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140910-00010003-bjournal-bus_all&p=1