2012年7月20日、アメリカ・コロラド州オーロラ市の映画館で、銃乱射事件が発生した。映画バットマンシリーズの最新作『The Dark Knight Rises』の上映中に起こったこの事件では、今のところ12人の死者、58人の負傷者が出ており、世界中がこの残虐な事件に大きなショックを受けている。
犯行に及んだのは、ジェームズ・ホームズという男で、逮捕時自分のことを「ジョーカー」(映画バットマンシリーズに登場する悪役の名前)と名乗っていた。そしてその犯人から、自分の愛する人を命がけで守った男性が現在世界中に感動を与え、本物のヒーローとして称えられている。
彼の名前は、Jon Blunk(25歳)といい、事件発生当時、彼女のJansen Youngさん(21歳)と一緒に映画を見ていた。彼らは昨年10月に付き合い始めたらしく、注目を集めていた映画『The Dark Knight Rises』の公開初日チケットをゲットできたことを大変喜んでいたという。
しかし映画上映中、事件は起こった。Jansenさんは事件が起こった時、これは何かの冗談だろうと思ったという。しかし軍務経験のある彼氏のJonさんは、すぐさま異変に気づいた。この時のことをJansenさんは、ニュース番組のイン**゛ューのなかで次のように話している。
「彼は、私にかがみこませ、『Jansen、かがんで、じってしておくんだ』と言いました。そして私を座席の下にとても強く押し込み、自分の体を盾にして私を覆ってくれたのです。彼は私の耳元で、ささやくように言いました。『銃を持った奴が、みんなを撃っている』と」
犯人による銃撃が行われていても、Jansenさんはこれが現実だとは信じられなかったという。そうして身を潜めていると、一人の女性が「撃たれたわ、撃たれた」と叫び出した。Jansenさんはこの時、自分の体がなにかの液体で濡れていることに気づいた。
「私はそれが何なのか、本当に分かりませんでした。その時、あちこちが濡れていて、私はこう考え始めました。『これは水風船に違いない。水風船以外のもので、こんなに濡れるはずはない』と」
しかし後に、それが血だったことが分かった。この他にも、Jansenさんは自分が隠れている座席の上で、ある男性が「Jessie(女性の名前)が撃たれた!」と大声で叫んでいるのを聞いており、「銃撃が聞こえるたびに、『もうダメだ……私は終わった』と思いました」とその時の心境を語っている。
そんな恐ろしいことが目の前で起こっていながらも、彼氏のJonさんは懸命にJansenさんを椅子の下に押し込み続けた。しかしある瞬間、Jansenさんは自分が撃たれた感覚を覚えた。それも何箇所に。恐らくこの時、榴散弾(りゅうさんだん)を受けたのだろうと、後にJansenさんは自分の胴に残った傷跡を見て、そう振り返っている。
「Jonはこの時、しっかり私を奥に押し込んでくれました……その後、私の背中を押す彼の腕の力が、全く感じられなくなりました。しかしそれでも、彼がそこにいるのは分かりました」
彼女はその時なにかが起こったのだろうと思ってはいたが、彼が亡くなっているとは思いもしなかったという。
「私は彼の体を揺すり、『Jon、Jon!行かなきゃ……ここから逃げなきゃ』と呼びかけた時、初めて彼が亡くなっていることに気づきました」
彼女が避難しようと、座席の下からはい出てきた時には、映画館にはほとんど誰もいなかった。そしてJonさんを肩に担ぎ、運び出そうしたが、彼は全く動かない。
「Jonは私を守るために、撃たれたのです。彼は私に生きるチャンスをくれました。彼はあの夜だけ、ヒーローだったわけではありません。ずっとヒーローだったのです。彼は言っていました。『Jansen、僕は自分の国のために働くため、生まれてきたんだ』と。彼は再び軍に入るつもりでした。それが彼のしたかったことであり、好きなことでした。きっとあの日、彼は可能なら、私にしたように他の人も守っていたことでしょう。そういう人なんです、彼は」
最後にJansenさんは、これからのことについてこのように話している。
「私は、今自分がコロラドに残りたいのかも分かりません。3日前、私はJonと暮らすため、Jonと一緒にいるために、コロラドに戻ってきたのです。しかし今は、何のためにコロラドにいるのか分かりません」
自分の命をかけて、愛する人を守ったJonさん。彼の勇姿、そしてJansenさんへの愛は、きっとこれからも語り継がれ、一生人々の心のなかで、その優しさは輝き続けていくことだろう。ここに謹んで、Jonさんのご冥福をお祈りしたいと思う。
[Daily News]
Jansen 可愛い