「きんは100シャア、ぎんも100シャア」そんな名セリフで日本中を沸かせた双子の100才、きんさんぎんさん。ぎんさんの4人の娘たちも今や平均年齢93才。その四女で、姉妹で唯一ひとり暮らしをしている百合子さん(91才)が大好きな掃除について語ってくれた。
百合子さん:「なんでそんなにきれい好きなの、ってよう聞かれるけど、年をとって、みっともないのはだらしがないがね。まして、この年になったら、いつ、あっちへ逝くかもしれんでしょ。自分の人生が終わったときに、「ああ、あのばあさん、ひとり暮らしだったが、家ん中、きれいに片付いとったなあ」と、そういわれたいがね。もっとも、死んだらどうでもいいことだが(笑い)」
朝食をすませて午前8時すぎ、百合子さんは新聞を広げ、大きな声を出して読む。それから趣味の園芸で育てた花を庭でとってくると、仏壇に供え、居間にも飾るため、花瓶に生ける。
百合子さん:「もう、毎日の日課になったねえ。お花屋さんで買うのもいいけど、自分で育てた花をさりげなく飾るのもいいものだでね。だって、ひとり暮らしの老婆にもちぃっとは、色気が欲しいがね(笑い)」
マイペースでひとり暮らしの自由と、楽しさを味わっている百合子さんだが、ときどき説明のしようがない「寂しさ」を感じることがある。
百合子さん:「近所には、いつでも会ってワイワイいい合える姉妹たちがおるのに、やっぱりひとりだと、気持ちがね、沈むときがある…」
そんなとき、百合子さんには、心を奮い立たせる方法がある。用意するのは、輪ゴムが2つ。これを右手首にはめて逆の手で引っ張り、パチーン、パチーンとはじくのだ。
百合子さん:「そりゃ、ちぃーっとばかし痛いけどね、「こんなことで落ち込んでなるきゃあ!」とかけ声をかけてね、パチン、パチーンとやると、ものの5秒で、くよくよしとった気持ちが逃げていって、元気が出てくるがね(笑い)」
そう言って、手首にはめた輪ゴムを鳴らす百合子さん。縁側から見上げる空に、刷毛ではいたような雲が浮かんでいる。
「おーい、百合子やあ、あんばようやりんしゃい!」
母・ぎんさんの声が聞こえてきそうな昼下がりだった。
[ポストセブン]
坂田銀時