手軽にプロの味を再現できると人気の、中華調味料「味覇(ウェイパァー)」ですが、この製造・販売をめぐって、あるトラブルが起こっているようです。
「味覇」を販売していた廣記商行と、“中身”の製造元である創味食品との契約が3月末で終了してしまうため、4月以降は中身が変わってしまうとのこと。
「味覇」の中身はもともと、創味食品が業務用に製造・販売していた「創味シャンタンDX」(1961年発売)という調味料。
これを一般向けにパッケージして販売しているものが廣記商行の「味覇」(1981年発売)で、両社は30年以上にわたって、業務用は創味食品、一般向けは廣記商行――という形で市場を棲み分け、友好的な関係を築いてきました。
しかし、それではなぜ急に契約終了となったのか? きっかけは廣記商行が2014年に発売したチューブタイプの「味覇」でした。
実はこのチューブタイプ、廣記商行が創味食品とは別の会社に依頼して独自に開発したもので、中身は従来の味覇(=創味シャンタンDX)とは別モノ。これを創味食品側が問題視し、今回の契約破談に至ったようです。
ただ、両社に詳しく話をうかがってみると、この部分、互いの見解が大きく食い違っていることが分かりました。
廣記商行側によると、チューブタイプはもともと、廣記商行側から創味食品に共同開発を持ちかけた製品とのこと(従来の味覇はチューブに入れると固まって出なくなってしまうため、缶タイプとは製法を変える必要があった)。
しかし開発にあたり創味食品側から原材料・添加物などの情報を開示してもらうことができず、双方合意のもと、一旦開発は打ち切ることに。その後やむを得ず他社に依頼して開発したものが、現在のチューブ入り「味覇」だとしています。
一方、創味食品によると、チューブ入り「味覇」は共同開発ではなく、創味食品が開発し、廣記商行に提案していたもの。
その際、廣記商行側は特に興味を示さなかったそうですが、それからしばらくして突然、廣記商行が他社と組んでチューブタイプを発売することが判明。
創味食品側は驚き、発売中止を要請しましたが、廣記商行側はそのままチューブタイプを発売したそうです。
その後のやりとりにも食い違いが見られます。
これを機に両社はあらためて製造委託の契約を結ぼうと動きはじめるのですが、廣記商行側によると、ある程度契約内容が固まったところで、創味食品側から突然「この契約はできません」と、受託を来年3月で終了することを突き付けられたそう。
しかし創味食品側に聞くと、今度は「廣記商行側から断られた」とまったく逆の回答。ちなみに契約内容には「今回のチューブタイプは認めるが、今後こうした類似製品を他社と製造・販売しない」といった条項が盛り込まれていたそうです。
創味食品から廣記商行への納品はすでに終了しているため、創味食品が製造していた従来の「味覇」は店頭在庫のみとなり、今後は廣記商行が独自に開発したものに随時入れ替わっていくことになります。
一部では「味が変わってしまうのでは」と心配されていますが、廣記商行側によれば「一番大切なのはお客様。味覇を愛してくださっているお客様に、これまでと同じ味を提供することが最大の役目です。
契約終了が決まってからすぐに、一緒に製造してくれる委託工場を探し、今までと同じ味覇を開発できたと自負しています。
私どもとしては、あくまで製造委託工場を変えただけという認識ですし、小売側からも『これは味覇ですね』と評価いただいています。今までと一切変わらない、これまでどおりの味覇だと思っていただいて大丈夫です」とのこと。
しかし、それでもやはり今までの味にこだわりたい……という人にも希望はあります。前述のとおり、これまでの「味覇」の中身は創味食品の「創味シャンタンDX」と同じ。
この「創味シャンタンDX」を家庭用サイズにパッケージした、一般向け製品が3月20日より発売されています。
創味食品によると「今はまだ棚に並んでいないお店もありますが、今後ほとんどのスーパーで取り扱いの内定をいただいております」とのこと。
とりあえず今後、「味覇」のあの味が完全に消えてなくなってしまうという、最悪のケースだけは避けられそう。両社のいさかいが無事解決することを祈ります。
[引用/参照:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1503/31/news144.html]