若者と「裏垢」の関係について先日、SNS上などで話題になりました。
近年、SNSにおいて、クラスの友達などに公開している「本垢(本アカウント)」とは別に、親しい人や一部の人だけに向けて発信するための「裏垢(裏アカウント)」を持つ若者が増加しているようです。
裏垢には、本垢では出さないような本音や愚痴など、赤裸々な内容を投稿する人が多く、友人の裏垢を探して検索やハッシュタグを辿るうちに、出会い系などのトラブルに巻き込まれるケースもあるといいます。
これについて「身近な人に打ち明けられない悩みがあるのはよくわかる」「裏垢で悪口言い放題っていうのもどうかと」など、さまざまな声が寄せられています。
複数のアカウントを使い分ける若者の心理とは、どのようなものでしょうか。家族や教育、子どもの問題に詳しい、作家でジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。
裏垢の存在自体よりも、その使い方が問題
Q.まず、裏垢を持つ若者が増加しているというのは事実でしょうか。その理由や背景について、どうお考えですか。
石川さん「情報セキュリティー企業のデジタルアーツが実施した調査(『第11回未成年の携帯電話・スマートフォン利用実態調査』、2018年3月)によると、裏垢の所有率は子ども(10~18歳)全体の39.6%。女子高校生では68.9%に上ります。
SNSを利用する際、複数のアカウントを使い分けるのは、当たり前の感覚になりつつあるでしょう。
リアルの友達とつながるための『本垢』、趣味を通じて仲良くなる『趣味垢』、愚痴や悪口吐き出す『闇垢』などがありますが、こうした使い分けはSNSに限ったことではなく、最近になって始まったことでもありません。
昔から、『本音と建て前』『心にもないお世辞を言う』などと言われます。リアルの生活でも人はいろいろな顔を持ち、人間関係を使い分けているのです。
裏垢を持つこと自体が問題なのではなく、その使い方やつながり方に注意が必要ということだと思います」
Q.本垢と裏垢を使い分ける若者の心理や、その背景についてどうお考えですか。
石川さん「人には『本当の自分をわかってほしい』気持ちと、『本当の自分を知られたくない』という、相反する心理があります。
例えば、人付き合いが苦手な女子高校生が、学校では無理して明るく振る舞っていたとします。周りの友達から、『いつも元気だね』などと言われると、『いや、本当の自分はそうじゃない』『素の自分をわかってくれる友達が欲しい』という気持ちになります。
だからといって『本当の私はそんなに社交的ではない』とは言いづらいし、そういう自分のことを学校の友達に知られたくない、という不安もあるのです。
SNSの裏垢では、素の自分をさらせたり、本音を受け止めてくれる人とつながれたりする面もあります。
また、今の若者や子ども社会は『同調プレッシャー』がますます高まっています。みんなと一緒、周りに合わせていないとハブられる、こんな空気に支配されています。
『教室は たとえて言えば 地雷原』という川柳を作った男子中学生がいますが、要は教室の中でいつも空気を読み、浮かないように気を使っていないと『地雷を踏んじゃう』、そんな緊張感があるわけです。
こうしたことからも、裏垢で素の自分になれたり、本音を言えたりすることが求められているのでしょう」
裏垢で友達の「裏の顔」を探る女子高生も…
Q.裏垢によってどのようなトラブルが起こりうるのでしょうか。
石川さん「裏垢だから何を言ってもバレない、こうした安易な考えで利用すると危険です。例えば、リア友に『検索される』というトラブル。
友達が裏垢でどんな顔を見せているのかを探ろうと、検索する子どもも増えています。私が取材した女子高校生は、『本名やニックネームをもじった言葉、好きな芸能人や趣味、よく使う口癖などから検索をかけるとたいてい裏垢が見つかる』と話していました。
そうして友達の裏垢を見つけたら、援交やJKビジネスの話ばかり載っていて、『ヤバすぎるから、付き合うのをやめた』と言うのです。
こんなふうに、裏垢が原因でリアルの信頼を失くしてしまうだけでなく、裏垢で何かのトラブルに遭ってもリアルの友達や家族には相談できません。
裏垢のつながりで何とかしようとしても、脅されたり、だまされたりしてもっと大きなトラブルになる可能性もあります」
Q.裏垢によるトラブルを防ぐために、周囲の大人が気を付けるべきことを教えてください。
石川さん「裏垢だからといって、一方的に禁止したり、問題視したりするのは現実的ではありません。誰でも人には言えない悩みやコンプレックスはありますし、裏垢を利用することで心の内をはき出しやすくなることもあるでしょう。
ただし、いくつかの注意は必要です。まず、裏垢の危険性やトラブルについて親子でしっかり調べ、共通認識を持つようにしてください。
できれば『こんなトラブルに巻き込まれたらどうするか』と、事前にシミュレーションしましょう。例えば、裏垢に書き込んだ内容が元で炎上したらどうするか、親子で考えてみます。
『炎上しないように書き込みに注意する』『もし炎上したら、すぐに○○に相談する』などのように、具体的に考えておくことが大切です。相談できる大人や信頼できる相談機関などの情報も伝えてください。
何より大切なのは、『あなたの表も裏も、どんなことでも受け入れる』という姿勢を子どもに示すことです。
いつも『良い子』であることを求めるのではなく、弱音や悩みはあって当然だから困った時は頼ってほしい、というメッセージをしっかり出しておきましょう」
[via:http://news.livedoor.com/article/detail/14743862/]