ある女性が沖縄に一人旅に出た。
梅雨前の沖縄は日差しもさほど強くもなく、とても過ごしやすい。女性は特にプランも立てず自由気ままに行きたいと思った場所に赴き、移動は主にタクシーを利用した。
タクシーを利用するのは運転手にお勧めの観光スポットや穴場を教えてもらうという意図があり、やはり地元人は面白い所を知っている。
その日も運転手に教えてもらった穴場的観光スポットに向かうためタクシーに乗車していた。
道中暇なので、何気なくなんか面白い話ありますか?と尋ねた。
すると運転手「あるよ」と語り始める・・・・・・・
運転手さんの趣味はスキューバダイビングで、休日は沖縄のきれいな海に潜るのを楽しみにしている。
そんな運転手が1年に一度だけ行く、秘密の場所がある。
そこに何をしに行くかというと、人魚に会うのだという。
人魚というのは人魚姫や伝説に登場し、上半身は人間で下半身は魚というあの人魚である。スキューバダイビング中に偶然見つけたと思われるその秘密の場所には二人の人魚が住んでいるのだ。
人魚が住むのは無論水の中、酸素ボンベなどを背負って行くのかと思いきや、潜水装備は一切付けない、必要がないのだ。
その海域は水中にも関わらず地上と同様に呼吸ができ、そこで運転手は1日中人魚達と戯れる。
運転手の話からすると、どうやら人魚は人語を理解し話せるらしく、二人というからどうも男女の人魚らしい。
水中に関わらず呼吸ができる不思議な海域で1日中遊んで、さて地上に帰ろうという際には必ず人魚達にお土産を持っていくように勧められる。
しかし、人魚からお土産をもらった者に良いことが起こることはあまりなく、むしろ悪いことが起こると聞いているので、お土産は受け取らず地上に帰ってくるのだという。
・・・・ここまで話を聞いて女性は運転手の冗談だと笑い飛ばしたが、運転手は断じてふざけてなどなく、本当の話だと繰り返し主張した。その場所はどこかと聞いても絶対に言えないという。
人魚の詳細な容姿やなぜ年に一度しか会いに行かないのか?等等多くの謎は残るが、どうも冗談とは思えないほど本気の口調だったのが印象的だったという。
沖縄には助けた人魚に津波が来ることを教えられる等の伝説が数多く残っており、もしかしたら人魚は伝説の中だけの存在ではないのかも知れない。