昨年、民泊サービスを仲介するサイト「Airbnb」で日本に宿泊する外国人観光客は300万人を超えたといい、利用者はもちろん民泊を前提とした部屋数も大都市を中心に右肩上がりで増え続けているという。
違法とみなされる事例も多々あったこの民泊ビジネスだが、今月10日には規制を大きく緩和する住宅宿泊事業法案が閣議決定。
民泊ホストの届出制度、民泊仲介業、民泊ホストの登録制度が早ければ’18年1月に施行される見通しだ。
そんな民泊運営において、利用客とのやりとりから清掃まで民泊ホストが直接運営を行う場合もあるが、大多数のホストが利用しているのが民泊運営代行サービス。
こうした代行サービスを行う会社も増加しているというが、相手とする利用客は9割以上が海外からの観光客。日本人相手の商売とは異なる、我々にはなかなか想像もつかない苦労があるという。
持ち去られる電子レンジ、作動するスプリンクラー……
「数が多いうえに厄介なのが、備品を持ち帰られること。うちは一般的な民泊用の部屋よりホテルに近い内装にして貸し出すことを売りにしているので、食器類や寝具、家電製品も極力良いものを置いているんです。
皿やフォーク、スプーンがごっそりとなくっていることは日常茶飯事。過去には電子レンジが持ち去られたこともありました。そのまま海外に帰られてしまうとほぼ音信不通になるため請求もできない。
『備品はすべて持ち出し厳禁』と最初に説明をしているんですが……」
そう語るのは、都内を中心に現在約250部屋の民泊運営・管理を代行する株式会社Cleverly Gainの代表取締役社長、大城戸宏和氏。
利用客とのやりとりには英語が話せる専任のスタッフを配置しているというが、夜中の利用客からの問い合わせにはみずから現地対応を行うことも少なくないという。
「夜中に利用客から『ガスが使えない』と連絡があって、現地に直行してみるとなぜか部屋中水浸し。顛末を聞いてみると、暖房の代わりにガスコンロの火を最大にして付けっぱなしにしていたみたいなんです。
そのせいで天井のスプリンクラーが作動。日本は長時間火を付け続けていると自動でガス栓が閉まる構造になっている部屋も多いんですが、『ガスが使えない』以前にこんなに水浸しにされると、翌日以降運用自体できない状況で……」
スプリンクラーの作動で管理会社の担当者も駆けつける始末。民泊ホストが管理会社に転貸の許可を取っていなかったため、即時撤退を命じられてしまったのだとか。
なぜか頻発する“シーツ血まみれ”事件
備品の持ち去りや常識外れな使い方に限らず、思わずゾッとする迷惑行為も多いという。
「部屋の清掃は別途アウトソーシングしているんですが、毎回清掃前の写真と清掃後の写真を清掃完了の証拠として送ってもらっているんです。
そこで驚くのが、シーツが血まみれになっていることがやたらと多い。頻度にして月に2~3度ですかね。生理中でも海外旅行先で盛り上がっちゃうものなんでしょうか……。
血痕って取れにくいので、通常のクリーニングだけでなく漂白もかけてもらわなければいけなくなる。ただでさえ収支ギリギリのなか運営しているので、この漂白代がバカにならないんです。
とにかくこの“血まみれ”だけはやめてほしい。なにより、お昼時にそんな写真が送られてくるとゲッソリして食欲なくなっちゃいますよ」
同業他者からの“チクリ”も
苦労の種となるのは利用客ばかりではない。
「我々が一番恐れるのは、保健所に不備を指摘されること。客を泊める以上、日本では旅館業法という法律に基づいた営業許可申請、基準を満たさなければなりません。
昨年以降、民泊ホストが逮捕される事例もいくつかありますが、これらは保健所からの警告を無視して運営を続けた結果の見せしめ的要素が強い、というのが業界内での通説。
保健所からの命令は絶対なんです。静かに運営しているぶんにはそうそう指摘を受けることはありませんが、同じエリアの民泊ホストや運用代行業者が『あの部屋は民泊用として使われている』と保健所にリークするケースが多いんです。
うちもこれで何部屋か保健所から撤退を命じられたことがあります。頻度にして、50部屋に1部屋程度でしょうか。いわゆる“足の引っ張り合い”ですね」
こんな苦労に日々頭を悩ませつつも、氏の会社が物件探しから運用を代行している部屋は全室黒字なのだそう。
「規制も緩和されますし、海外からの旅行者も右肩上がり。民泊はまだまだ参入の余地アリだと個人的に思っています。運用を代行業者に丸投げすれば、血まみれのシーツを見ることもないですしね(笑)」
[via:http://news.livedoor.com/article/detail/12885982/]