公式サイトに「チョントリー」など特定の人種や国籍を差別する文章を掲載したDHC代表取締役会長の吉田嘉明氏(79)。ネット上ではこの“ヘイト投稿”を受け「#差別企業DHCの商品は買いません」との不買運動が広がっている。
前稿#1では、吉田氏名義でDHC社内向けに不定期で出される内部資料「通達」と、現役社員(12月18日現在)の告発をもとに、吉田氏の常態化したヘイト発言について詳報した。
しかし、問題はこれだけではなかった。吉田氏は社員に対して、 “サクラ”として自社商品の口コミをネットに投稿するよう指示し、その対応如何によって、社員を“格付け”しているというのだ――。
「なりふり構わず逆襲に出なければならない」
2020年8月20日、吉田氏名義で社内に“檄文”のような「通達」が社内に掲示された。そこにはこう記されている。
《同業者が空を覆いつくす飛蝗か野壺にうごめく蛆虫のごとく蝟集するこの業界においては、NO.1だけがかろうじて認識され、あとはクズインチキの扱いしか受けない》
《もう我慢ができない。なりふり構わず逆襲に出なければならない。DHCは宣伝がどこよりも稚拙である》
《ある国籍不明の国会議員が「一番ではなく二番ではダメなんでしょうか」と寝ぼけたことを言っていた》
2020年8月20日に掲示された通達。「なりふり構わず逆襲に出なければならない」
現社員であるA子さんが語る。
「実はDHCの前期売上高が1000億円を切ってしまい、DHCが業界ナンバーワンの座から落ちてしまったんです。会長はそのことについて、かなり怒っているようでした。
その怒りの矛先はまず宣伝部に向かいました。社内向け文書『通達』のなかで《DHCは宣伝がどこよりも稚拙である》《どこよりも売り方がへたくそである》と批判したのです。
そして、新たな宣伝活動を始めるとして、社員に対し『らくがき板の活用』を指示したんです」(同前)
DHCの“らくがき板”とは?
“らくがき板”とは、DHCの商品を通販で購入した消費者のもとに送られてくる葉書のことだ。そこに商品の口コミを書いて返送し、DHCが発行している会報誌に掲載された場合は1万円分の商品が当たる。
「商品が欲しいと思って口コミを書いてくださる消費者が多いので、いい口コミばかりが集まります。そうでないと採用されませんから。なので、会報誌に載るのはDHCの商品を絶賛した口コミだけです。
一方でSNSや化粧品口コミサイトには、DHCに対して厳しい評価が書き込まれることもあります。会長はそのことがずっと気に入らなかったようです」(同前)
DHC口コミサイト「ネットdeらくがき板」
ついに“サクラ投稿”を募集
同「通達」で、ついに吉田氏は社内に向けてこんな募集を始めた。
《落書き版(原文ママ)に書かれた内容をデジタル化して、それをファンの人に成り代わってあらゆるメディアに次から次へと投稿していく、これを副業でやってくれる人を募集する。
固定給制度でスタートは月給10万円。毎月一度報告をしてもらい、貢献度によって11万円、12万円、・・・、20万円と上がっていく。DHCに愛社精神があり、是非やってみたいと思う人は応募せよ》(2020年8月20日「通達」より)
「ファンの人に成り代わってあらゆるメディアに投稿」(2020年8月20日)
「つまり、消費者の方が書いた口コミを、あたかも自分が商品を使用した口コミであるかのようにSNSやほかの口コミサイトに投稿せよという社員への“サクラ投稿”の指示だったのです。
投稿先として、Instagram、Twitter、Facebook、YouTubeなどのSNSのほかに、『アットコスメ』などの大手口コミサイトも対象として指定されました」(A子さん)
この募集に対して、当初は「多くの従業員が『こんな“グレーな業務”には関わりたくない』と目を伏せていた」(同前)という。
上司からの指示
「だから数人が応募したとしても、そんなに大規模な動きにはならないだろうと思っていました。なので、その後に会長から送られてきた『通達』を読んで驚きました」(同前)
《なんと応募者が二百数十名に達した。しかもその大半が、報酬は辞退したいというのである。会社の窮状を見て一灯をともしたいという愛社精神に満ちた社員がまだこれほどもいたのかと、小生はずっしりと重い申し込み用紙を抱いて落涙した》(2020年8月25日「通達」より)
「愛社精神に満ちた社員がまだこれほどもいたのか」(2020年8月25日)
DHC社員は約3200名。なかには会長がいる本社から遠い店舗や工場に勤めている社員もいる。なぜこれほど希望者が集まったのか。
実際に“サクラ投稿”をしていたというDHC社員のBさんが語る。
「もちろんこんな業務に関わりたくはありませんでしたが、コロナ禍で家計が逼迫していたこともあり、私は8月20日の『通達』で案内されていた通り、月給10万円スタートの有償で引き受けることにしました。
しかし応募があまりなかったのか、ある部署では上司から『無償でやると手を挙げなさい』と言われ、無償で引き受けた社員も多かったと聞いています」
DHCからB子さんに届いた分厚い封筒のなかみ
そうして2020年9月半ば頃から、“サクラ投稿”のプロジェクトが始まった。Bさんの自宅にはDHCから分厚い封筒が届けられたという。
Bさんの自宅に届いた、消費者の感想が掲載されているらくがき板
「応募した後、自宅に大量の“らくがき板”のコピーが郵送されてきました。この中から、自分の年齢や性別と近しいお客さまの口コミを選別して自分のSNSに投稿せよ、とのことでした。
ルールは、口コミの文言を一字一句変えることなく投稿すること。あくまでユーザーの方の口コミであり『口コミを捏造したわけではない』と主張したいのだと思います。でも、なりすましであることに変わりはありませんよね……。投稿には罪悪感がありました」
Bさんの自宅に郵送された、消費者の感想が掲載されているらくがき板
Bさんが“サクラ投稿”をしている間にも、DHCからは細かい指示があり、そのたびに少しずつルールが変わっていったという。
「当初はアットコスメなど大手美容口コミサイトに投稿する社員が多かったのですが、『運営に目をつけられるかもしれないから』と投稿制限がかかりました。それ以降はInstagramやFacebookに投稿している人が多いようです。
ついには要報告のノルマ化
最初はノルマもなく、空いた時間に1、2件投稿するだけでよかったのですが、最終的には家族にも投稿してもらうことや、1日2件以上投稿することが“有償投稿”の条件になりました」(同前)
口コミを投稿した後には会社への報告も義務付けられたという。
「どんな内容の口コミをどのSNSに投稿したのかを管理する専用サイトが作られ、自分の成果はそこに記録していました。実際に投稿した口コミのスクリーンショットをメールで秘書の方に送るようにも指示されていました」(同前)
口コミのスクリーンショットをメールで秘書に送るように指示
そのうち“サクラ投稿”に関わる社員だけのメーリングリストが作成され、吉田氏の秘書から「会長からのお言葉を連絡します」と、吉田氏の熱い感想が届くようになったという。
《諸君の熱心な投稿活動によって、本プロジェクトはすこぶる順調に推移している。必ずや成果につながるものと確信している。(中略)
DHCの宣伝広告部隊の社員は商品知識が乏しく、他社に比べて驚くほど全てが稚拙である。(中略)もうDHC広告宣伝担当者には頼るな。お客様に頼っていこう(原文ママ)》(吉田氏の言葉が記載されたメール2020年10月12日)
「会長からのお言葉」には「すこぶる順調に推移」
社員の複雑な心中とは裏腹に、吉田氏は投稿を引き受けた社員、特に報酬を辞退した社員がいることに感激したようで、彼らに対し“称号”を与え、称賛した。
「ゴールド社員」という称号
《報酬を辞退したいと申し出てくれた奇特な人達には、家で仕事をしてもらうわけにはいかないので、当然就業中の手がすいたときにやってもらうことになる。この人たちには「ゴールド社員」という称号を与え、その愛社精神を将来にわたって尊崇の対象としたい》(2020年8月25日「通達」より)
”サクラ投稿”への応募者に対し「その愛社精神を将来にわたって尊崇の対象としたい」という通達(2020年8月25日)
《無償ゴールド会員はいま専用のゴールドバッヂを作っているので、これも今しばらく待っていただきたい。無償ゴールド会員は賞与支給の際にその貢献度に応じて熱く報いるつもりである(原文ママ)》(メール2020年10月12日)
「無償ゴールド社員はいま専用のゴールドバッヂを作っている」
こうした“サクラ投稿”は法的には問題ないのだろうか。消費者庁に取材したところ、「非常にグレーではある」という。
「口コミを事業主側が捏造した場合は景品表示法で取り締まりの対象となります。内容を捏造せず、あくまで消費者の感想を転載する場合に取り締まり対象になるかどうかは、個別のケース次第です。
それでも事業者側が消費者の良い感想のみを意図的に選んで転用するという行為は、消費者の商品選択のために好ましい行為とはいえません」(同前)
らくがき板協力者専用サイトスクショ
うまく法を潜り抜けようと
また文化庁の担当者に取材したところ、こういった見解を示した。
「口コミも、内容に創作性があり、ある程度の長さがあるものは著作物にあたります。そのため、事前に著作者に告知せずにほかの媒体等に転載・転用する場合は著作権法違反にあたります」
Bさんは、「会長は著作権法違反の恐れがあると途中で気が付いた」と明かす。
「10月から、お客様に送付されるらくがき板の葉書の仕様が変わったのです。『あなたに代わって活字に清書し、いろいろな活字媒体に掲載されるように取り計らいます』との但し書きが追加されました。
著作権法を気にしてのことでしょう。しかし結局いま現在社員が“サクラ”をしているもののほとんどは、但し書きが付け加えられる数年前の感想です。いまになって但し書きを加えれば、許されるものなのでしょうか…」
Bさんが続ける。
「ゴールド社員の待遇からもわかるように、会長は、たとえ違反行為であっても、見返りを求めず、とにかく会社のために身を粉にして働く人が大好きなんです。
社員のなかには生活のためや他の趣味のために働いて結果を出している人もいるのに、そういった人は『不要な社員』として見なされてしまう。 “愛社精神”が人事評価にも直結するんです」
「文春オンライン」はDHCの人事評価項目が記された文書を入手した。するとそこには目を疑う評価基準が記されていたのだ——。
[via:文春オンライン]
https://bunshun.jp/articles/-/42629
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ネットの反応
・予想以上にやべーなココ
・こういうことやりだすとその商品の本当の評価ってわからなくなるよね。
・やりすぎかな。会社存続の為に何とかせねばって会長の経営者としての危機感は分かるけどこれをやっちゃうと本当に良い商品だったとしても嘘なんでしょ?ってなっちゃうよ。
・この規模の会社ではSNS投稿禁止はあってもステマは推奨せんわな
・どうせバレるのにトップも下手な手打ったもんだね
・ここまで大規模にステマやってて今まで公にならなかったのが凄いが、元々胡散臭いジャンルの商品だしね。
・レビューが評価になるって、怖い時代だ。
・ランサーズとか使えばいいんじゃね?
・テレビをつけてると、DHCのCMを流してる番組って多いんだよね。
・偏り過ぎた思想持つと何をやっても正義だと勘違いしてしまうよね
・凄いなぁ、愛社精神って社員や従業員から自然に湧いてでるならば素晴らしい企業となるけど、、、上から愛社精神を強要してる時点でもう愛じゃないよね笑
・自己陶酔気味な社内通達を出してる会長が…なんだか気持ちが悪くて、ここの製品は使いたくない。
・消費者は企業の理念にもお金を払うということを、この会社のトップは知らないんでしょうね。社員の方々が本当にかわいそうです。
・社内通達の社内秘を外部に出す従業員もダメ。でも、それほど従業員も追い込まれ良心の呵責悩みに悩んだ末だと思う。
・サクラなんてどこでもやってるでしょうけど、過ぎたるは及ばざるが如し、何事もやり過ぎてはいかんですよ。
・行政にも調査してほしいが、みんなの党から自民党に乗り換えたようなので、行政も動きづらいのかもしれませんね。
・今年の秋までDHCに勤めていましたが、文春記事の内容は全て事実であり、誇張もされていません。わたしはサクラ=愛社精神=評価、といった通達が余りにも気持ち悪く、仕事のモチベーションがなくなったので転職しましたが、改めて異常性を感じています。社内にいると麻痺するようです。みんなクビにならないために媚を売る意味でサクラ志願していましたから。色々な部署で退職勧奨が進んでおり、産休中の社員は既に名前が消されているという噂もありました。同僚は良い方ばかりでしたので、色々と心苦しいです。
・文春訴えられるのは確定だな
>これ、新潮とは違って証拠を抑えてる記事だぞ
>ゴシップ誌は訴えたれるのコミだから、なんにも痛くないんだよなあ。
・つかこの手のやり方は巨悪の電通初め食べログとかどこもやってると思ってる。要は自分がどう思うかよ。
・ゴールド平社員の皆さん、このスレでも擁護の書き込みをお願いします。書いた方はFAXで報告して下さい。皆で会長を守りましょう。