船上に26匹の羊と10匹のヤギがいる。このとき、船長は何歳でしょう?
40年前、数学教育を専門とするフランスの研究者がこの問いを小学低学年の子どもたちに投げかけた。すると、大多数の子どもが「36」と答えたそうだ。
もちろん、船の上に動物が何匹いようが、船長の年齢と関係はない。解けるはずのないナンセンスな問いだが、子どもたちは反射的に、文中に出てきた数を足し合わせ、もっともらしい「解」を導き出したのである。
その後、グルノーブルにある「数学教育研究所(IREM)」は、規模を大きくした追加実験を行った。
すると、出題された7歳から9歳の子どもの9割近くが、この問題が無意味であることに気付かず、文中の数字を組み合わせて答えをひねり出したという。
その後、ドイツやスイスなどでも同様の実験が行われ、子どもたちの同じような反応が確かめられた。
ショッキングだが、にわかには信じがたい話だ。この実験を紹介しているベルギーの教育心理学者エリック・ディコルテらの著書「Making Sense of Word Problems(文章題を理解する)」の中に、この実験の正当性を疑ったアメリカのある教育研究者のエピソードが紹介されている。
彼は、実験の対象に選ばれた子どもたちが、たまたま「よい数学教育を受ける機会がなかった」ことが、結果に影響を及ぼしたと考えた。
そこで、試しに我が子に、同じ問題を出してみたそうだ。すると、小学5年の彼の子は、迷わず「36」と答えた。驚きと落胆とともに「なぜ?」と尋ねる父に、「こういう問題のときは、数字を足すか引くか掛けるんだよ。この問題の場合、足すと一番うまくいく」と返事があった。
こうした子どもたちも、実際に船に乗ったら、船長の年齢を調べるために、まさか羊やヤギを数えはしないだろう。「算数の文章題」という体裁で出題された途端に、普通だったらあり得ない不合理な推論を、平気でしてしまうのである。
私たちはそもそも何のために算数を学ぶのだろうか。原点は、「読み、書き、そろばん」の「そろばん」である。
つまり、あらかじめ決められた手続きにしたがい、正しく計算する能力を身につけること。実際、試験では制限時間内に正しい答えを一つでも多く導くことが求められる。
その結果、計算の「意味」をいちいち考えない癖がつく。
そうした試験でいい成績を収めた人は、社会に出ても「言われたことを、言われた通りに、正しく実行する能力」に秀でている可能性が高い。そして、かつてはそうした能力が希少だったのである。
だが、言われたことを、言われた通りに、正しく実行する能力に関しては、もはや人間はコンピュータに及ばない。では、そもそも何のために算数や数学を学ぶのか。この問いは、移り変わる時代の中で、くり返し問い直していく必要がある。
単なる計算の技術ではなく、論理的な思考を頼りに、新たな概念を生み出し、それを使いこなしていくこと。それこそが、数学を通して学ぶことができる最も大切な能力である。「読み、書き、そろばん」ではなく、「読み、書き、数学」が常識になった未来を、私はこの目で見てみたい。
[via:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23043870S7A101C1FBB000/]
ネットの反応
・なるほど
高校の頃は何も考えずに適当に公式を当てはめてたな
・これ、わかる。こういう解き方してた。
・世の中には答えが出ない問題に直面することが多いわけ
その時ある情報では解は絶対に出ないのだが、判断だけは下さないといけない。
この問題はそういう問題。
・動物しかいないじゃん 船長いねえ
・これ読んで思ったのは、これって子供に限ったことじゃないし、算数に限ったこともないんじゃないか、ということ。
・うちの子供も「36」と答えた。なかなか問題は根深いな。
・問題文をちゃんと読まず「なんとなく」パターンで答えを出してくるというのは日本だけの問題ではないということですねぇ。
・いえ、「答えは無い」もしくは「わからない」という答えがありえる、ことを教えない教育の弊害です。
・出題されるものにとって重要なことは「答えを提示すること」であって「答えを出す過程やその意味」ではないんですねえ。
・お勉強とはこういうパターン化された解法を覚えて、いかに素早く適切に当て嵌めることだと思い込んでた時期がありましたよ、ええ。
・これって、そんなに衝撃的なことなの?
無関係な数字を出して錯覚させるというのは昔からよくやる手じゃない?
・というかこれ昔のなぞなぞの、「男の子が風邪で寝込んでいると牛が『モウ~』と鳴き、蝶々が飛んできました。男の子の病気はなんでしょう?」って程度のひっかけに過ぎなくないですか(^^;)?
・ただのトンデモ理論じゃねーの
・まさにこれが忖度
・考えようによってはテストで答えわかんなくてもとりあえず何か書いとけの発展系と取れなくもない
・世界がようやくダウンタウンの漫才に追いついたか……
あれを「おもしろい」とは思わなんだがw
>それ真っ先に浮かんだw
花子さんはリンゴを買いに行きました、さて、どうでしょう?ってやつw