高校のとき夢中になったビジュアルバンドのバンドマン。そんなあこがれの人と、大人になって深く交際するようになった。いつかはこの人と結婚したい-。
ファンの女性は生涯をともにすると心に誓った。だから「暴力団から脅された」「元カノを妊娠させてしまった」と何を言われても愛を貫き、けなげに金を送り続けたのだ。その額、何と1億円。
だが、そんなバンドマンは子供がいる妻帯者だった。裏切られたと知り、ついに夢から覚めた女性は損害賠償を求めて大阪地裁に提訴。対するバンドマンは「ファンからの贈り物だった」と反論したが…。
彼はドラマー
訴訟記録によると、川本美穂さん(38)=仮名=が、40代のAと出会ったのは今から20年以上前のこと。
大阪城公園でAが所属するビジュアルバンドのストリートライブを見たのがきっかけだ。Aはドラマー。一目でファンになった川本さんは毎週ライブに通うようになった。
高校3年になった川本さんはやがてAと交際するようになった。いったん破局し、しばらくは距離を置いていたが、成人になって再び付き合うようになった。
そんなある日、Aがいきなり不穏のことを口にした。以下、川本さんの証言から当時のやり取りを振り返る。
「俺、今、訴えられてんねん」
驚く川本さんに、Aはこう続けた。
「おまえと付き合う前に何回かやっただけの飲み屋の女が、勝手に子供を産んでいた。慰謝料と養育費を払わなあかんようになってん」
そして「2千万円が必要だ」と言ってきた。
川本さんは当時、風俗店で働いていた。Aは毎日の売上金から、生活費1万円を引いた金額を自分の口座に振り込むように頼んできた。
ほれた弱みか、川本さんは毎週、金を振り込むようになり、およそ2年半で約2千万円を用立てた。
「小指」守るため5千万円…
Aの要求はこれで終わらなかった。
今度は暴力団から脅され、おわび金として1千万円を払わないといけない、と川本さんに泣きついた。「これを払えば結婚できる」
しかし、同時にショックなことも言われた。
「今の店の稼ぎじゃ何年かかるか分からん。もっと稼ぎのいいところに行け」
「ソープがあるやろ。お前やったらいけるやろ、高いとこ」
Aの無心は続く。今度は自身が関わりのある暴力団を「組抜け」したいというのだ。
Aがまっとうになってくれるなら、川本さんにも願ってもないことだ。だが、組抜けするには条件があるという。「けじめ」として金銭を納めるか、小指を切って詰めるか、どちらかだというのだ。
そしてAは川本さんにこう訴えた。
「小指ってドラムたたくのにめっちゃ大事やねん。俺がドラムたたかれへんなってもかまへんのやったら、全然指詰めてくるけど」
川本さんは「それは嫌」と答えた。するとAはわが意を得たりとばかり「やろ? いくらかはまた連絡する」と話し、後日5千万円をふっかけてきた。
「俺のためにがんばってくれ。これ終わったら本当に結婚して幸せになろ。完全に(組を)抜けれたら俺もちゃんとした仕事探す」
その言葉を信じ、つらい毎日に耐えた。5千万円を渡し終わったときには、6年近い歳月が過ぎていた。
そしてそれが終わるやいなや、今度は「沖縄でやっている店が摘発された」として、解決金名目で1400万円をせびった。Aの欲求はとどまることを知らなかった。
「人の親」バンド仲間の言葉に衝撃
ソープで働き、巨額の現金を貢ぎ続けた川本さん。その間、Aからは何を得たのだろうか。
手作りの指輪を、もらったことがあるという。「次はもっとちゃんとしたやつあげるからな」。Aからこう言われ、川本さんは舞い上がった。
《そのときの私のうれしさは言葉にできないほどでした。それまでの苦労が報われる日がやっとくるのかと思い、うれしくて仕方なかったです》
2人でマンションのモデルルームを見学したこともある。Aが案内してくれた人に「婚約しているんです」と紹介してくれたこともあった。
だが川本さんはついに現実を知る。ある日、Aのバンド仲間がふと口にした。
「あいつ、あれでも人の親やから」
人の親-。体に電流が走った。その言葉は、Aが結婚していること、そのうえ子供までいることを示していた。
《そのときの衝撃は言葉にできません。金づるにされていたことにようやく気づきました》
《今思えば、なんで信用したのか》
結婚という目標があったから金を渡してきた。川本さんはこれまで貢いだ約1億円と慰謝料1千万円の支払いを求め、大阪地裁にAを提訴した。
これに対し、A側は「ファンとしてAの個人的事情とは関係なく金を貢いできたのであり、贈与の性質を有する」と主張した。
「現在は何の愛情もない」
迎えた大阪地裁判決は、川本さん側の主張をほぼ認め、総額約8千万円の賠償を命じた。判決は川本さんの心理について「強い恋愛感情や執着心を持ち、(Aにとって)特別な存在でありたかった」と推認。
そのうえで「将来の結婚をにおわせつつ、金を受け取ったAの態度は不法。原告の受けた衝撃は大きく、人格権侵害の度合いは軽いものではない」と批判した。
A側は判決を不服として控訴。
「ファンとしての好意から、バンドの活動費用や生活費の支援として贈与した」と同じ主張を繰り返したが、大阪高裁の控訴審判決も「(貢いだ金の)原資の多くはソープランドで働くことで得られたものだ」と指摘。
「大きな苦痛を伴って得られた収入を単にファンとしての好意から贈与するということは到底考え難い」と控訴を退けた。
川本さんは裁判の中で、Aへの感情をこう述べている。
《現在は何の愛情もありません。あるのは憎しみです。私の人生をむちゃくちゃにしたうえ、裁判では自分の責任を全く認めようとしないし、嘘ばかり。最低な男を信じてしまった自分が悔しい》
[via:http://www.sankei.com/west/news/170920/wst1709200009-n1.html]
女がバカ
こんな話いくらでもあるよね、