我々人間は、「禁じられたもの」に魅力を感じてしまう習性がある。あまりにも残虐なため封印された事件があると聞くと、どうしても気になってしまう。禁じられているのだが、「見たい」「知りたい」という欲求が生じるのが、人間の性(さが)なのだ。
だから人々は物語を生み出したのだと思う。神話や小説、映画などのフィクションのなかに、本当にあった禁忌を潜めて、渇望を満たしたのである。
次に紹介する事件もその事例の一つだ。あの『進撃の巨人』(諌山創「少年マガジン」掲載、講談社)の元ネタになったとも言われている。
ソニー・ビーン事件
15世紀はじめのスコットランドの荒野で、旅人たちの行方が、次々と途絶えてしまという事件が起きた。失踪事件は20年間も続き、消えた旅人は1000人以上にも上ったという。
この事態を深刻視した国王は、手当たり次第に疑わしい者を捕らえては処刑を繰り返した。しかし、一向に失踪者の数は減ることはなかった。
ある日、街に馬に乗った一人の男が現れる。男は命からがら、逃げ延びてきたという。そして彼の証言により、謎に満ちた大量失踪事件の真相が明らかとなった。
男は妻と二人、一頭の馬にまたがり、村祭りから帰る途中だったという。海に近い岩場の道を走っている時、物陰から何者かが現れた。
次々と姿を現す異形の者たち。彼らは普通の人間とは違っていた。体の大きさもまちまちの、野蛮人のような風体だったという。男は剣を抜いて応戦するが、妻が捕まり、馬から引きずり下ろされた。
彼らは一斉に、妻の身体に群がってゆく。彼女の喉元を刃物で切り裂き、一人が鮮血をすすり始めた。腹を裂いて、内臓を取り出している者もいる。男は必死に抵抗するが、やがて力尽きてしまった。
覚悟を決めたその時である。祭り帰りの集団が、こっちに向かって歩いてきた。彼らは慌てて、妻の死体を引きずりながら、その場から逃げ去っていったという。
男の証言をもとに、国王が軍隊を率いて一帯を捜索する。そして、彼らの住処とおぼしき、海岸沿いの洞窟を発見したのである。
すさまじい臭気が漂う洞窟内。天井には、人間の腕や足、胴体が吊されている。樽に詰められ塩漬けされた人肉もあった。獣のようなうなり声がして、奇怪な集団が襲いかかってくる。
だが武装した捜索隊の敵ではなかった。彼らはたちまちのうちに制圧されたのである。
次々と旅人たちと襲い、その人肉を食糧にしていた奇怪な集団。洞窟に住み着いていた異形の者は48人。驚くべきことに、その集団は全員、血のつながった家族であることが分かった。彼らの父親の名はソニー・ビーンという。
生垣作りや溝掘りの一家に生まれたソニー・ビーン。だがある日、あくせく働くことに嫌気がさして、家を飛び出してしまう。そして、一人の女と知り合い、洞窟で暮らすようになった。
町や村へは出向かず、洞窟の中だけで生活し、女と性を貪り合う日々。二人は一向に働こうとはせず、常に飢えに苛まれていた。
そこでビーンは、ある方法を思いついた。道行く旅人を襲い、金品を奪い去るのだ。その金で食糧を買えばいい。こうして、殺戮を繰り返すことになった二人。
襲った相手の命は必ず奪い、遺体は必ず洞窟まで持ち帰った。自分たちの犯行が、絶対にばれないようするためである。最初は強奪した金品で食糧を買っていたのだが、やがてそれもすぐに底を尽きてしまった。
そこで二人は、襲撃した旅人の人肉を食べることにしたのだ。一度に食べきれない分は干物にしたり、海水につけて貯蔵した。
そんな生活が、25年も続けられたのだ。性欲が旺盛だったという二人は、8人の息子と6人の娘を儲けた。さらに子供たちが近親相姦を繰り返し、孫息子が18人、孫娘が14人と、ビーンの一家の数は25年の間に、計48人の家族となっていた。
家族の人数が増加するにつれ、人殺しの回数も増えてゆく。空腹の子供たちの、腹を満たしてやらなければならないからだ。一家が25年間で殺害した被害者の数は、1500人以上にも及んだという。
捕らわれたビーンら一家は、全員に死刑が宣告された。殺された旅人たちの報復のため、彼らは残虐な方法で刑に処されることになった。
女たちはこれを見るよう強制され、その後、生きたまま火に炙られ、焼き殺された。ソニー・ビーンとその家族たちは、命果てるまで、呪いの言葉を吐き続けたという。
ソニー・ビーン事件は、当時の公文書などに記録が残されていない。歴史家の中には、この事件は現実に起こった出来事ではないと考える者もいる。
だが記録が残っていないのは、あまりにも残虐な事件だったため、当時のスコットランド王朝が全ての記録を削除し、封印したという説もある。
[via:現代ビジネス]
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56958
『進撃の巨人 全3シーズン』※Amazon PrimeVideoでも観覧OK
映画『ロード・オブ・ダークネス(ソウニー) / Lord of Darkness (原題 Sawney: Flesh of Man)』※Amazon PrimeVideoでも観覧OK
ネットの反応
・進撃の巨人の元ネタじゃなくて、進撃の巨人に出てくる巨人の名前の元ネタだよね。
・ソニービーンはどちらかといえば、進撃というよりホラーの映画「クライモリ」シリーズの元ネタみたい。
・単に巨人の名前に拝借しただけでは?
・ソニー・ビーンの話は本当だったらすごく興味深い。人間が野獣になりうるという点で。ホラーな作り話のような気もするけど。
・進撃の巨人はもっと奥が深い 元ネタではないよ
・ソニー・ビーンは当時イギリスで大人気だった「ニューゲート・カレンダー」という実録犯罪集に載ってから有名になったんだよね。でもタブロイド紙程度の信憑性しかないので、本当かどうかは謎。
・近親相姦は障害になる人が多いからね。人間の肉を食べる人は頭おかしくなるって聞いたことあるが、元々頭がヤバかったんだろうな。最後の呪いの言葉が怖いんだけど・・・
・やはり、人間は恐ろしい生き物です。
・ジョージ秋山の「アシュラ」でもカニバリズムをコミックで表現してますね